五月雨

少し前に脇田弁護士が亡くなった。

今流行のあの病気です。

連絡を受けたのは葬式から一週間後だった。
発熱から死亡まで、わずか8日…
七十二歳は、あまりにも早すぎる。

脇田さんとの出会いは今から26年前…
庄子が傷害事件をおこしたので弁護士を探していた。

『昔、世話になった弁護士がいます。紹介しますよ。』

陽子ちゃんから受け取った名刺を手に、法律事務所を訪ねたのが始まりだった。

あれから25年…
長い付き合いだったなぁ。

家庭内の虐待を始め、様々な理由で家族と暮らせない施設の子たちに寄り添ったり、少年犯罪に手を染めた子たちの更生を支援していた。

『少年法を厳罰化しても少年犯罪は無くならない!それより更生に力をいれるべき』

この考えの一致で僕と脇田さんは意気投合し、夜遅くまで語り合ったものだ、

数えてみたら脇田さんの紹介で、何らかの形で関わった子は全部で32人。

あの人が僕に誰かを押し付けるときのパターンは、いつも同じ。

まず、その子の不幸な生い立ちを静かな口調で長々と語りだす。

あの子に罪は無い。どうして周囲の大人たちは誰も助けてくれないのだ。
ほんの小さなきっかけで立ち直れるのに…

と、天井をあおぎながら大きなため息をひとつ…

そしてその後、一言

『ミネ君のところで面倒をみてくれとは言えないよね…』

おい!ちょっと待てや!
面倒をみさせる気満々で来てるやろ?

不幸な境遇を長々と聞かされたら、僕が断れないことを熟知してやがる。

あんたは策士か?
黒田官兵衛みたいなじいさんだった。

とは言え、32人のうち半分以上は逃げ出されたけど、素晴らしい出会いもあったと感謝している。

だが、僕を必要とする子たちを紹介してくれる脇田さんは、もう居ない。

ささやかなお別れの会が催されたが、弔問に訪れる人もほとんど無かった。
こんな御時世だから外出が怖いのもわかるけど…

僕は1人座り、遺影に向かって長い時間話しかけていた。

脇田さん…
僕たちがやってきたことは、本当に誰かの役に立ったのかなぁ。
独りよがりの自己満足だったのかもしれないね。

あなたが手を差し伸べた子たちは誰も来ない。
別に感謝されたくて始めたことじゃないけど、お別れぐらい言いに来ればいいのに…

何だろう…この虚しさは…

外は雨…
人生はこの五月雨のようなもの…

後戻り出来きず、後悔しても決してやり直せない

落ちて行くだけの片道雨を見ていたら、ふとそんなことを考えてしまった。

僕たちの想いも一方通行で届かなかったものばかり…

更生させたつもりでもまた再犯で捕まった子もいる。

でもあなたは決して諦めなかった。
うっとうしがられても何度も何度も寄り添って…気にかけて…

とても僕には真似できそうもない。
偉大な人でした。

お別れ会には来れなくても、あなたに感謝している子が大勢いると信じたい。

僕も感謝している1人です。

お疲れ様でした。

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