パッションでつかんだ夢。やりたいことに向けて挑み続ける女性の働き方

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マイナビウーマン
2021/07/30 11:10

取材・文:太田冴

編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部

「ただ“かわいいもの”や“かっこいいもの”を作ることには、あまり興味がないんです」

そう話すのは、サントリーコミュニケーションズ株式会社に務めるデザイナーの山岸彩乃さん。多くの人が一度は飲んだことがあるであろう『ほろよい』や『サントリー天然水』シリーズなどを手がける、敏腕デザイナーです。

デザイナーと言えば、見映えの良い商品パッケージを作ることがお仕事なのだろう、と思い込んでいた私は、冒頭の言葉にびっくり。

山岸さんがデザイナーとして目指しているものは、一体何なのでしょうか? 根掘り葉掘り聞いてきました。山岸さんの商品への深い、いや、深すぎる愛が炸裂するインタビューとなりました!

■目指すのは「人の役に立つデザイン」

現在デザイナーとして数多くのサントリー商品のデザインを手がけている山岸さん。これまでどんな商品に携わってきたのですか?

入社して初めて担当したのは『ほろよい』です。その後も『天然水スパークリング』のリニューアルを担当したり、カジュアルワインブランドの『デリカメゾン』、『BOSS』、『ペプシコーラ』、『オランジーナ』のパッケージを作ったり……。

すごい! 私、全部飲んだことあります。

ありがとうございます! サントリーの場合、約25名のデザイナーで酒類や清涼飲料などの全ての商品デザインを担当しているので、一人のデザイナーが同時に数十もの案件を担当していることもあるんです。なので、これまでに携わった商品は、他にももっとたくさんありますよ。

一人でそんなに多くの商品を担当されるなんて、びっくりです。正直、大変じゃないですか?

大変ではありますが、もう慣れました(笑)。幅広い商品を担当するからこそ良いアイデアが思い浮かぶこともあるんです。

また、サントリーはデザインを外注するのではなく社内で制作しています。なので、マーケティングを担当する部署や中味開発部署など他の部署と一つのチームになって商品を作っていくので、商品のコンセプトからアウトプットまで一貫して携わることができます。その作業は本当に楽しいし、やりがいを感じるんですよ。

たくさんのデザインをされてきた中で、一番思い入れのあるものはどの商品なのでしょう?

どれも大好きな商品ばかりですが、一番は『サントリー天然水』ブランドでしょうか。2018年の『天然水スパークリング』のリニューアルを担当したのですが、『サントリー天然水』について学んでいくうちに水の大切さをひしひしと感じるようになっていったんです。あぁ、なんて意義深いブランドに携わることができているのだろう、と。

「意義深い」というと?

私、正直言うと、ただ“かわいい”“かっこいい”ものを作るという表現方法の一つとしてのデザインにあまり興味がないんです。私が目指しているのは、人の役に立つデザイン。

人間って、水がないと生きていけないじゃないですか。自然の恵みによって作られた『サントリー天然水』というブランドを通じて、人の「生きる」を支えることができる。それってすごく大きな夢を感じるし、その社会的な意義の大きさが、私にとってモチベーションになっているんです。

「人の役に立つデザイン」、とても印象深い言葉です。

■美大に行かずにデザイナーに「パッションで乗り越えた」

そもそも山岸さんは、どうしてデザイナーになろうと思ったのですか?

実は父もデザイナーをしているんです。自動車メーカーで自動車や電動車椅子のデザインを担当していました。

小学生の時、宿題で仕事のことについて父にインタビューをしたんです。そしたら父が「デザイナーは人を幸せにする仕事だよ」って話してくれて。

すてきな言葉ですね。

その言葉が今でもすごく心に残っているんです。それで、私も多くの人を幸せにできるデザイナーになろう、と。ただ、デザイナーへの道はそう甘くはなかったですね。

そうなんですか?

デザイナーになる人って多くが美大出身だと思うのですが、私は美大出身じゃないんです。というのも、高校時代はソフトボール部で練習に明け暮れていて、美術系の予備校に通うこともできなくて……。

それでもデザイナーになる夢を諦めたくなかったので、首都大学東京(現在の東京都立大学)のシステムデザイン学部というところに入学しデザインの道を確保しました。

サントリーの入社試験の時も、美大出身で絵がうまい人たちに囲まれながら挑んだら、なんとか合格。もう、パッションで乗り切った感じです(笑)。

結果として、目標としていたデザイナーになって、やりたい仕事をできている。それってすごいことだと思います。

パッションのおかげですね(笑)。入社する前も今も、その姿勢は変わっていないと思います。例えば6月に新発売された『THE STRONG 天然水スパークリング』のデザインを担当しているのですが、これも様々な難関をどうにかパッションで乗り越えた結果生まれた商品なんです。

どんな難関だったのですか?

この商品は、五感に着目して、強炭酸の刺激を味わいだけでなく、視覚、触覚、聴覚なども使って感じていただくことを目指した商品なのですが、実は強炭酸のペットボトルって、凹凸のある複雑な形状を作るのがすごく難しいんです。炭酸の圧によってボトルが膨らみやすいので、ボトルの形に制限がありました。

ただ、私はどうしてもバキバキした凹凸のあるボトルにしたかったんです。視覚やボトルを持った時の触覚など、五感をフルに使って強炭酸を楽しんで欲しかった。そこで凸凹のボトルを提案したのですが、社内では「無理だろう」と言われてしまって……。

実現できないのでは、と。

はい。何年もボトルを作り続けた技術者の方から「勝算はあるの?」と言われた時は泣きそうになりました(笑)。でも、最終的には「できるか分からないけど、一回やってみるか」と背中を押してくれて、何度も試作を重ねて理想的なボトルを作ることができました。

すごい! 周りの方も最後は「トライしてみよう」という考えになったんですね。

サントリーは、創業者の「やってみなはれ」精神が根付いている会社です。「失敗してもいい、もう一回やり直せばいいから」という風土があるからこそ生まれた商品が、これまでもたくさんあるんです。

山岸さんのように困難な道も切り拓いていくには、具体的にどうすればよいのでしょう?

自分のやりたいことを言葉にしてちゃんと伝える、というのが一番大事なことだと思います。大人になると、やりたいことがあっても恥ずかしがってしまったり「自分には資格がない」と思い込んでしまったりすること、よくありますよね。

でも、私はやりたいことがあるんだったら、人にどう思われようが伝えるべきだと思うんです。自分が心から信じることをしっかりと頭の中で整理をして、言葉にして、素直に伝える。とってもシンプルだけど、大切なことだと考えています。

■『サントリー天然水』新工場で「自然と触れ合うきっかけを作りたい」

山岸さんが今一番力を入れて取り組んでいることは何ですか?

今年長野県大町市に新しくできた『サントリー天然水』の北アルプス信濃の森工場で、来年の春にはお客様が自然との触れ合いを楽しむことができる施設をオープンさせる予定なんです。

その工場見学の内容や空間のデザインなどを、まさに今練っているところです。

商品を製造するだけでなく、お客様も楽しむことができるなんて面白い工場ですね。

最近注目を浴びている「SDGs」ですが、私たちが本来、最初にすべきことは「自分にとって、自然はどんな存在なのか」を考えることだと思うんです。自然がどうして大切なのか、を理解できなければ、本当の意味で自然を思うことはできないと思います。

そこで、私たちはまず、お客様が自然に触れて、自然について考えるきっかけを作りたいと思ったんです。

それで、北アルプスの工場では自然と触れられる機会を設けようと思ったのですね。

はい。私自身、仕事で思い悩んだ時は、自然と触れ合いに行きます。そうすると、自分の悩みがものすごくちっぽけに感じられて、とっても癒やされるんです。

どうしても考えすぎてしまう私の性格には、自然のような自分ではどうにもならないくらい大きなものに接することがいいんだと思います。

とても真摯にお仕事に向き合い、熱中されているんですね。

今は、北アルプス信濃の森工場でお客様が自然に触れている姿を想像すると、とってもワクワクします。「こうなったらいいな」という未来が想像できると、ものすごくワクワクするし、ずっと楽しく仕事をしていられる気がします。

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